触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
「鈍い? 私が? そんなはずは……」
「じゃあ僕が今なにを考えているか当ててみて」

 強く抱きしめられ、髪を撫でられる。鼓動が異常に速くなって心がついていけない。さきほどとは違う種類の鼓動の乱れに、オリヴィアは混乱した。

「そんなの、わかりません。どうして助けにきてくださったのかもわからないのに」
「それもわからないの?」

 オリヴィアは離れようとして突っ張った腕を所在なく下ろし、うなずく。
 確かなのは、こんなに激しく心臓が打ちつけていても、この腕の中は怖くないということだけ。


「きみが好きだ、って思ってる」
「嘘です」

 心臓がどくんと跳ねた。反射的にまた可愛くない返事をしてしまった彼女に、フレッドが肩を揺らして笑った。

「どうして嘘だと思うの? まったくきみは僕の気持ちに鈍い」
「ごめんなさい。その、フレッド様はアイリーン様と親しい様子でおられたので……。それに今日はあまり目を合わせてくださらなくて、踊りも早く終わらせようとしておられましたし」

 思い出してまたつきりと胸が痛む。鼓動がうるさくて、何を言いたいのか自分でもわからなくなる。
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