触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
 だいたい、許可は出したけれど、これは「触れる」の範囲を超えているのではないだろうか。

「アイリーンとは恋人の振りをしていただけだよ。彼女に頼まれていたんだ。僕にとっても都合が良かったからね。だが皆が噂するようなことは何もないよ」
「どうして演技をする必要が?」
「オーレル卿の心を取り戻すため、と言えばいいかな。だが彼女との演技はもう終わりだ」

 オリヴィアは勘違いに恥じ入った。二人の仲を邪推した自分の卑小さが嫌になる。

「じゃあ、不機嫌でおられたのはどうしてですか?」
「うーん、そんなつもりはなかったんだが……。きみが」

 フレッドが急に口ごもる。

「私が?」
「いや、あんまり、その……抑えが効かなくなりそうだったから」

 かすかに届く広間の音楽のせいで、急に小さくなった彼の声が聞き取れない。

「何ですか?」

 彼が咳払いした。

「とにかく、ごめん」
「いえ、私の勘違いで、……良かった、です」

 フレッドが息をのんで、彼女の顔を覗きこむ。

「気にしていた?」
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