触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
 首筋に手を添えると、その薄紅色に染まった頬に唇を落とす。繰り返し、こめかみや額、鼻先へとかすめるように唇を這わせる。

「私も……。淋しかったの」

 潤んだ目で訴えられ、束ねていた理性の糸が一本ぷつりと切れた。

 フレッドは彼女の唇に自分のそれを重ねた。反応を注意深く探りながら、彼女の唇の弾力を味わう。
 彼女の吐息が甘い。眩暈がしそうだった。

 彼女はすっかり蕩けそうな顔をしていた。
 早く酔いをさましてもらわないと、これ以上はいろいろと危険である。
 テーブル上の水差しからコップに水を注ぐ。

「これを飲んで」

 彼女に差し出せば、おずおずと飲み干す。吐息を零す姿がやけに色っぽい。

「いつもごめんなさい……、フレッドさまに手間ばかりおかけして」
「きみはこの視察のために頑張ったんだろう? 今日のきみの応対が素晴らしかったと同僚も褒めていたよ」
「陛下のお話をうかがううちに、飲み過ぎてしまいました」
「どんな話?」
「ヴィオラ殿下のことを……。とても可愛い方だそうですね。今シーズンにデビューなさるので、その準備にとても力を入れておられるとか。一人娘だからと甘やかしてしまったのでわがままになった、と……苦笑しておられました」

 フレッドは片眉を上げてこっそり嘆息した。
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