触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
 宰相補佐官として王宮に上がるようになり、彼がヴィオラ王女と顔を合わせる機会も増えた。彼女の兄である王子たちはいずれも歳が離れており、かつ王位継承権も低いためか、王女は好き放題している。

 その王女に、フレッドがなぜか「兄様」と呼ばれてまとわりつかれていた。そのことは目下の彼の悩みでもあるのだが、そんなことは彼女には言えない。

「でも、殿下のことをお話になる陛下はとても優しい目をしておられて……。父も、母がいた頃には私たち姉弟にも良くそんな目を向けてくれたわ」

 オリヴィアが懐かしそうな目で遠くを見つめる。

「きみも僕に甘えてくれればいいよ。頭を撫でようか」
「フレッド様は人が悪いわ。まるで私が子供みたい」

 拗ねた表情にも庇護欲をかき立てられる。フレッドは一言断ると、彼女を軽く引き寄せてその頭を撫でた。彼女が大人しく頭を預けて、うっとりと目を細める。
 自分に気を許してくれていると思うと、大切に守りたい気分とめちゃくちゃに壊してみたいという相反する気分が同時に湧き起こった。

「きみは少し気を張りすぎなんだ。僕の前でくらい、力を抜けばいい」
「もう充分、あなたの前では恥ずかしい姿ばかりさらしているのに」
「じゃあもっとさらせばいい。見たいな」

 ふっと笑ってオリヴィアを覗きこむと、さきほどよりも赤くなっている。
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