触って、抱いて、もっと愛して。臆病な令嬢は貴公子の一途な熱情に蕩かされました(原題「その身体に触れたら、負け」)
 フレッドが彼女の手を包み、親指で甲を撫でる。そのまま口もとへ持っていき、彼女の手のひらに唇を押し当てた。

「フレッド様……!?」

 手のひらから手の付け根、そして手首へ彼の唇がやんわりとたどっていく。
 オリヴィアの頭が羞恥で沸騰しそうになる。

 彼がその手を引いてオリヴィアを抱き寄せ、肩口に頭をうずめた。
 鼓動がどくどくと忙しない。彼にまで聞こえているのではないだろうか。

 だけど、色めいた仕草と裏腹に彼の表情は切迫したものに見えた。
 元気がないような気がする。

「寝る前に少しだけクッキーはいかがですか? カモミールのクッキー、お好きでしょう。ここの庭のものを摘んだので、香りが良いですよ」

「……ああ、前にきみと食べたやつかな」
「ええ。カモミールには鎮静作用があるんですって。きっと疲れを癒してくれますよ。今夜はお茶もカモミールティーにしたから飽きるかもしれませんけど」

 フレッドが彼女の肩口でひっそり笑う。

「カモミールクッキーか、好物だよ。きみに出されたものなら何でも癒されるけどね。ありがとう、いただくよ」

 フレッドが顔を上げる。栗色の髪が、オリヴィアの首筋をくすぐった。

「食べたら少し付き合ってくれないか。外に出よう」

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