無感情なイケメン社員を熱血系に変える方法
「いらっしゃいませ」

商品を見ているお客様に声を掛けるタイミングは難しい。一人でゆっくりみたい人、話しかけたそうにしているが恥ずかしくてできない人、ただ迷っているだけの人。

相手のニーズに合わせて対応することの大切さを、彩月の接客をみながら駿太郎は実感していた。

「今度、フルマラソンに出ようと思っているんですよ」

30代とおぼしきカップルが、彩月と駿太郎に話しかけてきた。

「でも今から練習始めるから、どんな靴を選んでいいかわからなくて」

二人の手に取っているシューズはいかにもスタイリッシュで格好いいデザインのランニングシューズだった。

「それでしたら、その靴はあまりオススメできませんね」

二人の欲しがっているランニングシューズは上級者用。しかも"フルマラソンサブ3~サブ4にオススメ"というコーナーに置いてあった。値段からいうと二万円代なので、もし買ってもらえれば、お店としてはいい売り上げになるはずだ。

しかし、彩月は、初心者用のあまりスタイリッシュではないシューズのコーナーを指差した。

「シューズには、用途に合わせた製作者の意図が盛り込まれているんです」

彩月は二人の持っているシューズと初心者用のシューズを比較して、分かりやすく説明を始めた。
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