無感情なイケメン社員を熱血系に変える方法
「過去にランニングやマラソンをされたことはありますか?」

「いえ、この間、友達がフルマラソンに出たので応援に行ったんです。きつそうだったけど、ゴールした人達の清々しい表情が印象的で、私も走りたくなって。だから練習もこれからなんです」

一緒にいた彼氏の方は、サッカーをやっていると言ったが、やはりフルマラソンは初心者。

「今回、僕は単に付き合わされているだけで、一緒に走ってもいいかなーって感じです」

モチベーションは様々。しかし、素人が42.195kmを走りきるにはそれなりに準備が必要だ。

彩月はまず、先程、駿太郎に説明したように、二人に対してシューズに関する説明した。

そして二人に了承をとり、足圧や土踏まず、足幅、長さを測定する。

駿太郎も、彩月に教わった通りに機械での測定を補佐する。彼女を測り終えると、彼氏の方は駿太郎が一人で測定した。

「わー、俺って左に片寄ってるー」

「私は右」

「お二人が仲良く寄り添ってるからでしょうね」

彩月のさりげない冷やかしに、二人の頬が紅潮する。確かに二人は仲良く肩を寄せ合いながら靴を選んでいた。

彩月はここでさりげなく二人の名字を聞いた。女性が前田さん、男性が原さんと名乗った。

「前田さんはサイズが24cm,幅が2Eがオススメですよ」

彩月が原さんの資料を持った駿太郎を見て頷く。

「原さんの方はサイズが27cm,幅が2Eですね」

そして展示されているランニングシューズとお取り寄せ可能な商品のパンフレットの中から該当する品を紹介した。

二人は感心したように商品を手に取ったりパンフレットを覗いたりしている。

「ランニングは思った以上に足腰に負担がかかります。マラソンを楽しむためにも、適切な商品をご紹介できるように致しますので、疑問点は何でもおっしゃってくださいね」

彩月の丁寧な接客ぶりに思いやりまで感じて、お客二人も駿太郎も、なぜか心がジンとするのだった。
< 12 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop