無感情なイケメン社員を熱血系に変える方法
「話は何? 早くしてもらわないと走る時間がなくなるんだけど」

駿太郎の言動に、駿太郎以外の羽生家メンバーが目を見張る。

「「走る?」」

「駿太郎さんは、今、私と一緒にフルマラソン完走のためのランニング教室を受け持っていて、秋のハーフマラソンにもエントリーしてくれているんです。最終的には、コースのメンバーと一緒に、12月のフルマラソン完走を目指してます」

彩月がにこやかに説明を加える。

「ランニングとか、フルマラソンとか、どうしたらそんなことになるわけ?運動全般拒否してたのに」

妹の真由香が立ち上がって言った。

「仕事の一貫ですし、駿太郎さん、とてもランニングの素質があるんですよ。この2週間でキロタイムもあがって来てますし、何しろフォームが素晴らしいです」

「彩月にはかなわないよ」

優しい顔で彩月の頭を撫でる駿太郎の様子に両親も兄妹も唖然としている。

「ホントのことだもの」

「ありがと」

人目もはばからず、イチャつく二人に翔一朗が水をさす。

「あーあ、俺がウィングライフスポーツに派遣されてればよかったなー。俺が先に彩月ちゃんに目をつけてたのに」

実業団所属の翔一朗がウィングライフスポーツで働けるわけはないのにと駿太郎はムッとする。

「表情が豊かになったなー、駿太郎。2週間前とはえらい違いだ。彩月さんのお陰かな?」

羽生社長がようやく口を開いた。
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