無感情なイケメン社員を熱血系に変える方法
「羽生くんは左前重心だね」

計測データを見ながら彩月が告げた。駿太郎も結果をプリントした紙を覗き込む。

左に重心が傾いて、土踏まずがほとんどない様子がグラフィックに現れていた。足底圧も高い。

「でも、明らかなバランス異常ではないよ。股関節も少し負担がかかってるかもね。そんな時は、このインソール(靴底)を使ってみるといいよ」

彩月は、1枚一万円もするカスタムインソールを駿太郎に手渡してきた。

「こんなものが一万円?」

「そうこんなものでも優れものなんだよ」

彩月は嬉しそうに言った。

「羽生くん、このシューズ履いてみて」

そう言って、彩月は駿太郎にオススメのカスタムインソールを敷いた28cmの靴を渡した。

シューズをはくと、まっすぐ起立の姿勢をとらされる。

「ねえ、羽生くん、押してみるよ」

向き合った状態で、体を押される。駿太郎はびくともしなかった。

「じゃあ、革靴履いて」

先程と同じことをされると、駿太郎の体は後方へぐらついた。駿太郎の無表情な顔に驚きがみえる。

彩月はそれを見て、心の中でガッツポーズをした。
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