無感情なイケメン社員を熱血系に変える方法
「それにしてもひどいな」

二人はウィングライフインテリアに来ていた。家具を見る二人のところに店員は誰も寄ってこない。

レジのところと雑貨のところにそれぞれ2名の店員。ずっとおしゃべりをしており、客がいるのに知らん顔をしている。

『アジア人が来たわよ』

観光客とでも思っているのか、商品を売ろうという気がそもそもないのか,,,。

日本のウィングライフインテリアとは接客態度からして異なる。

「この間までの俺もあんな風に見えてたんだろうな』

駿太郎は苦笑した。

『Hi,May I ask you something?(ちょっといいかしら)」

彩月は笑顔で店員に近づいていった。
駿太郎も無表情でそれに近づく。

『今日からこっちに越してきたの。家具を探しているんだけど教えてくれない?』

『まあ、観光客かと思ってたわ。どんな家?アパート?あああ、一軒家なのね。それなら,,,』

雑貨のところにいた二人の店員が嬉しそうに彩月を案内する。

はじめて接する相手、しかも外国人でも、彩月はすんなりと相手の懐に潜り込んでいく。

「一種の才能だな」

苦笑する駿太郎に

『そっちのダーリンも一緒に見なさいよ』

ポッチャリしていて、いかにも結婚後に体型がかわった代表のような30代女性店員が振り返ってよびかける。

『私はリンダ。店舗内にあるものであれば、今日中に配達できるように手配してあげるから安心して。見ての通り、お客も少ないしね』

ウィンクするリンダに悪気はないらしいが、今回みたいに常にやる気を見せれば業績もあがるのでは?と駿太郎は厳しい顔をした。

『ああ、リンダ、ありがとう!さすがになにもない部屋でどうやって過ごそうかと不安だったの。心強いわ。色々教えてくれる?』

彩月の満面の笑みに、他の社員も吸い寄せるれるように近づいてきた。

『何々?楽しそうね』

あっという間に彩月の周りに人の輪ができた。

通路を歩くお客も、飾られているインテリアの説明を一緒に聞こうという者が近づいてきている。

『ほう、この辺りに引っ越してきたのかね?サンフランシスコははじめて?』

お客まで巻き込んでのインテリア購入談議が始まった。

駿太郎は何となく、自分が萱の外にいるようでいたたまれなくなった。


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