無感情なイケメン社員を熱血系に変える方法
『どうしたの?珍しくサツキと一緒じゃないんだね』

アルバイト職員として先月採用されたユーゴが、ウィングライフインテリアのバックヤードでランチをとっている駿太郎に話しかけてきた。

無言でうつむいたままの駿太郎を前にしても怯まない、いつも笑顔のユーゴとは、駿太郎が心を開いて話せる初めての友人と言えそうだ。

ユーゴは駿太郎や彩月と同じ年だか、高校を卒業してお金を貯めてから大学に入り直した苦労人で、日系三世らしい。とはいえ、日本語は拙く、簡単な挨拶ができる程度だ


今はデザイン学部の4年生で、夏休みを利用してウィングライフインテリアにアルバイトとして働き始めた経緯がある。

『サツキが,,,』

『サツキが?』

『隠し事をしているようなんだ』

ユーゴは茶化すことなく駿太郎の話を聞いていた。

『そういえば、さっき、ショウイチロウが来ていたね』

『彩月が目をそらしたり、話をごまかすなんて、こんなこと初めてで、どうしていいかわからないんだ』

無表情な中にも困惑が見てとれる。

『大丈夫。サツキは駿太郎に隠し事はできないよ』

自信をもって言い切るユーゴに向かって駿太郎が顔をあげる。

『どうして言い切れる?』

『目をそらしたり、ごまかしてるのがその証拠だよ』

怪訝な顔をする駿太郎の肩を、ユーゴが笑いながらポンと叩く。

『駿太郎、今日の仕事終わりにちょっと付き合わないか?その証拠を見せてあげるから』

今日のシフトは駿太郎もユーゴも17時まで。

ランチタイムを終えて戻ってきた彩月に、ユーゴとの約束を告げると、満面の笑みで

「わかった!先に帰っておくね」

今度は目をそらさずにいつもの笑顔を向けてくれている。

"信じたい"

駿太郎の不安は夜まで持ち越すこととなった。
< 83 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop