無感情なイケメン社員を熱血系に変える方法
翔一郎がウィングライフインテリアを去った後、日本フリークで話の長い中年のアメリカ人男性につかまり、駿太郎はつたない英語で接客していた。

この3ヶ月で駿太郎の英会話力も上がり、今では簡単な接客は駿太郎一人で行い、対応困難なときは彩月か店長をインカムで呼び出すシステムに変えた。

20分後、なんとか男性の目的とする家具を販売すると、ウィングライフスポーツのサッカーコーナーで、笑顔で会話する彩月と翔一郎が目に入った。

すると翔一郎が彩月に何かを耳打ちしている。真っ赤になった彩月の顔。その頭を翔一郎の手が優しく撫でる,,,。

カッとなって思わず走り出しそうになったそのとき、別の女性客に話しかけられた。

二人は笑顔でバックヤードに消えていった。

そんな中、駿太郎はモヤモヤとした気持ちを抱えたままランチタイムを迎えた。

「彩月」

「駿太郎。お疲れさま」

「さっき、兄貴と何話してた?」

「な、何って特別なことではないよ」

珍しく焦って目をそらした彩月に、駿太郎は怪訝な顔をした。

これまでの彩月は、常に前向きでやましいことは一切ないといった態度で駿太郎を見つめながら会話をしてきた。

出会ってから初めての彩月の態度に、内心、駿太郎の心は動揺と嫉妬で揺らめいていたが、得意の鉄壁で武装してしまい、表情には出ない。

「翔一郎は英会話も得意で、彩月に迷惑をかけることもないもんな。男らしいし」

「翔一郎さん?そうだね。何でもできる完璧主義者で頼りになるよね。何より,,,」

「何より?」

「な、何でもない」

頬を赤く染めて目線をそらした彩月に、益々不信感が募っていく。

"まさか翔一郎と何かあったのか?"

そう、笑って彩月に冗談めかして尋ねればいいのに言葉にできない。

肯定されたらと思うと、言葉がでない。この3ヶ月で駿太郎のプライドは愚か、自信は全くないと言っていいほど崩れつつあった。

それを支えていたのは紛れもなく彩月。

彩月を信じているからこそここまで来れた。見えない9ヶ月後にもなんとか未来を馳せることができている。

「と、とにかく翔一郎さんとは何もないから。あ、そうだ、今日は私、今から行くところがあるから、ランチはユーゴと食べてね」

そう言って、財布をつかむと彩月は足早に、モールのどこかに消えていってしまった。



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