無感情なイケメン社員を熱血系に変える方法
「兄貴、まさか,,,!」

駿太郎はカッと目を見開き、翔一郎を押し退けると、慌ててリビングに駆け込んだ。

彩月と駿太郎の大切な場所に入り込んで、俺を裏切るようなことをするなんて,,,!

駿太郎は悔しくて気が狂いそうになっていた。

"バンッ"

とリビングのドアを開ける、それと同時に

"パンパン"

とクラッカーが弾ける音があちこちから聞こえてきた。

「駿太郎、誕生日おめでとう!」

リビングにはたくさんのオードブルとケーキ、アルコールやその他の飲み物がところ狭しと置いてあった。

そこにいたのは彩月だけではない。

駿太郎の両親と妹、彩月の祖父母、彩月の幼馴染の賢、ウィングライフインテリアとウィングライフスポーツの非番のスタッフが顔を揃えていた。

「彩月、これ,,,」

「翔一郎さんの言うとおりね。駿太郎は自分の誕生日なんて覚えていないって」

午前中、翔一郎はこの駿太郎の誕生日会の最終打ち合わせに来ていたようだ。

この一ヶ月、彩月はここにいるみんなとないしょで打ち合わせを繰り返していたらしかった。

「言い出しっぺは翔一郎さんよ。本当に弟思いのいいお兄さんね。駿太郎の家族もみんなわざわざ日本から来てくれたのよ」

彩月は、駿太郎の手を引きながらリビングの中央のみんなの前に引っ張って行く。

途中、駿太郎の耳元で

「愛されてるね。でももちろん私が一番駿太郎を好きだけど」

と囁きながら。

駿太郎は泣きそうな顔で思いきり彩月を抱き締めた。

「おいおい、俺達の存在を忘れるな!いちゃつくのは後からでも十分できるだろう?」

翔一郎のヤジが翔ぶ。

"俺はこんなに大切にしてくれる二人を疑ってたのか"

家族の好意も周りの人々の思いやりを受け入れるのも、彩月以外はこれが初めてだった。

「ありがとう,,,」

駿太郎は心からそう言って、無表情な仮面を剥がし、そこに笑顔をまとった。
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