恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜

「大丈夫か」

乳母や侍女たちが子供の面倒を見てくれることになり、鳴鈴はひとりきり、静かな後宮で休んでいた。

飛龍が予告もなく突然顔を出したので、鳴鈴はびっくりして飛び起きた。

「飛龍さま、来るなら来ると、先に言っていただかないと!」

化粧が、服が、とあわあわする鳴鈴を褥に戻して飛龍はため息をついた。

「そのままでいい。ゆっくり休め」

鳴鈴が日頃から無理をしているのを彼は知っていた。皇后の位についてしまってから、人前ではいつも完璧な化粧で髪を豪華に結い上げ、重い衣装を身に付けている。

国母として相応しい女性になるため、政や軍事を学び、後宮のしきたりを学び、宮廷行事に参加し……それに加えて四人の育児。

「でも、もうすっぴんで見られる歳は過ぎてしまったもの」

「そんなことはない。どんな格好でも、お前は綺麗だよ。だからあまり無理するな。お前は子育てだけしていればいい」

どうしても皇后として人前に出なければならないときは、子供とのんびり過ごしていればいい。

そういう意味で言ったのに、鳴鈴は上体を起こし、飛龍をにらんだ。相変わらず大きな目に、涙が溜まっていた。

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