高桐先生はビターが嫌い。

高桐先生を見た瞬間、心で思うよりも先に、心臓が大きく跳び跳ねる。

高桐先生も、コンビニに来ていたのか…。

そう思っていたら、高桐先生が言った。



「日向さん？え、奇遇だね。っつかビックリした」

「え。あ、あたしもですよ。先生、コンビニによく来るんですね。確かこないだも、コンビニの前で会いましたし」



それにその日も、確か誰かとのデートの帰りだったな。

あたしがそう思いながら言うと、高桐先生が言った。



「や、だって俺ら男二人暮らしだし、両方とも料理とかしなくてさ。だからこのコンビニにはいっつもお世話になってんの。まぁ今選んでんのは夜食だけど」



と、高桐先生はそう言いながら、お惣菜コーナーに目を戻す。

…そっか。だからこの前、ロールキャベツをあんなに嬉しそうに食べてくれてたんだ…。

そう思って、あたしも適当に菓子パンを選ぶと、高桐先生が言った。



「っていうかもう夜遅いのに、出歩いてちゃアカンでしょ」

「へへっ、ごめんなさい」

「…待って、もう22時だよ。こんな時間になって外出るのだめ。っつかどこか出掛けてた帰り？いま」



そう言うと、高桐先生が。

自身が身につけている腕時計に目を遣って、本当に心配そうにそう言うから、思わず少しだけ嬉しくなってしまう。

その言葉に、あたしが場所は言わずに、「はい、遊びに行ってました」とだけ言ったら、先生が「女のコなんだから危ないでしょ」とあたしに言った。



「…ん、これからは気を付けます」

「そう。それで、」

「多分ですけど」

「！」