一途な御曹司に愛されすぎてます
 私の家柄について康平が不満を漏らしたことは一度もないし、大丈夫だ。

 男らしくて頼りになる康平のことだもの。
 きっと私を守ってくれる。私の気持ちさえしっかりしていれば、明るい未来に導いてくれる。


「そろそろ宿に帰ろうぜ。マジで全身が凍結しそうだ」


 寒そうに肩をすぼめた康平が軽く洟を啜りながら言った。


「うん。私も靴の中のつま先が冷えてジリジリしてきたよ」


 我を忘れるほど美しい世界だけど、この厳しい寒さまで忘れることは無理だ。そろそろ限界。

 宿に向かって歩き出しながら、私はポケットの中に入れていた手を出して遠慮がちに康平に差し出した。


「手、繋いでいい?」


 こんな幻想的な世界で、恋人と手を繋ぎながらゆっくりと夜道を歩くのが夢だった。

 寒さとは別の意味で頬を染める私に、康平は軽く眉をひそめた。

「やだよ。こんな寒いのにポケットから手を出したくない。俺が外でベタベタすんのが嫌いなの、淳美も知ってるだろ?」
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