一途な御曹司に愛されすぎてます
 テラスに用意されているテーブルセットに腰掛けて、庭いっぱいに咲き誇る花々の美しさに見惚れていたら、すぐ横で「矢島様」と声をかけられて心臓が大きな音をたてた。


「おはようございます。ゆっくりお休みになれましたか?」


 花々の美しさにまったく負けていないイケメン専務さんが、私の隣で微笑んでいる。

 今日のスーツは明るいグレーで、見るからに上質な生地が生み出す品の良い艶感が日差しによく映えていた。


 高級スーツを当たり前のように着こなす彼の笑顔を見た途端に、夕べのあれやこれやの記憶が怒涛の如くに押し寄せてきて、パーッと顔が赤らんだ。

 私、こんな素敵な人から告白されたんだ……。


「お、おはようございます。おかげ様でぐっすり眠れました」


 ベッドが豪華すぎて庶民の私には合いませんでした、なんてことは言えない。


「素晴らしいお庭ですね。私、お花が大好きなので感動していたところです」


 無難な挨拶をして笑顔を見せる私に、彼は「それはよかった。相席をしてもよろしいでしょうか?」と丁重に聞いてくる。

 もちろんお断りする理由もないので、私たちは天然石天板の丸テーブルを挟んで向かい合った。
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