一途な御曹司に愛されすぎてます
「他のお客様がただ漠然と感じていたことを、ちゃんとした言葉で私に伝えてくれたのはあなただけだ」

「ですから、それはただの偶然……」

「そうです。偶然です」


 私の声に被せるように同意して、彼は大きくうなずいた。


「あの日、あのとき、あの場所に偶然いたあなたが、偶然あの言葉を口にした。そして偶然、それを私が聞いた。それこそに意味があるんです」


 信念を感じさせるほど凛とした表情で、真っ正直に彼は断言した。


「それほどの偶然が起こった事実こそを、運命と呼ぶのです。少なくとも私はそう信じて疑わない」


 言葉通り一片の迷いもない澄んだ目に射抜かれて、その曇りのなさと熱さに私は息を呑んだ。

『運命』という大袈裟な言葉なのに、彼が口にすると不思議となんの違和感も感じない。

 人の言葉が、こんなにも聞いた者の心を大きく波打たせることができるなんて知らなかった。

 あのときの私の言葉も、彼の胸を熱くさせたんだろうか?

 きっとその熱さが彼をこうして突き動かしているんだ。
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