一途な御曹司に愛されすぎてます
 私が今日ホテルを発つことは、当然彼も知っているはず。

 私から色よい返事を得ていない彼は、最後の時間に私に会ってどうするつもりだろう。

 そして私も、どうするつもりなんだろう。

 もしも彼からまた改めて交際を真剣に申し込まれたら、その場できちんと断ることができるのだろうか?

 そうとは言い切れなくなっている気持ちの変化を、私は自覚していた。


 現実問題として、私と彼では到底釣り合わないということは、自分が一番よくわかっているつもりだ。

 でも、そんなことを微塵も気に留めていない彼のひたむきさと情熱を思うと、心が揺れる。


 もしかして私は考え過ぎているんじゃないだろうか。

 身分違いの恋とか、今どきそんなの流行らないのかも。

 私が自分の平凡な生まれ育ちを必要以上に卑屈に感じているだけで、逆に育ちのいいセレブの人たちは、そういったことに頓着がないのかもしれない。
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