一途な御曹司に愛されすぎてます
 私は驚いて目を瞬かせた。まさか彼はこの花を摘むために庭に出たんだろうか? 雨の中を?


「矢島様が庭に咲いていた花をお気に召してくださったので、ぜひお届けしたかったんです。ちょっと失礼」


 そう言って彼は部屋の壁際に置かれたテーブルに近づき、クリスタル製の大きな花瓶に花を飾り始めた。

 黙々と作業する後ろ姿を眺める私の胸がジーンと痺れてくる。


 私のために、わざわざ新鮮なお花を用意してくれたんだ。

『ちょっとだけ』なんて言ってるけど、彼の体から雨と土の匂いが強く香っている。

 ずっと雨に当たりながら、どの花がいいか真剣に選んでくれたんだろう。

 庭師さんや従業員に頼むこともできたろうに、彼は自分の手で花を切って、濡れた花を抱えてここまで運んでくれたんだ……。


「でも私、お昼前にはチェックアウトしてしまうのに」


「それは関係ありません。あなたに最高の時間をお届けするのが私の喜びなんですから」


 ギュッと心臓を掴まれたような熱い疼きを感じて、息が詰まる。

 体の奥から込み上げてくる感謝と幸福感を噛みしめながら、私は彼の背中に向けてお礼の言葉を伝えた。


「ありがとうございます。とても嬉しいです」

「喜んでいただけてなによりです」
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