一途な御曹司に愛されすぎてます
「専務に『遊ぶな』とは言いません。でもお遊びと現実をしっかり見極めるのが、大人の男の分別というものなんですよ?」


 若輩者を窘めるような声に、私の体と心が冷えていく。

 なんだか、すべてが惨めでたまらない。階上さんが私に接近することは、他の人から見ればお遊びとしか映らないんだ。

 さっきまで自分が浮かれていたことも、こうしてコソコソ盗み聞ぎしている行為も、なにもかも悲しくて情けなかった。

 唇を噛んで耐える私の耳に、とどめの言葉が突き刺さる。


「悠希坊ちゃん、はっきり言わせていただきます。矢島淳美という女性は、我が階上グループにはふさわしくありません」


 全身を貫かれたみたいな衝撃が走り、心臓が潰れるかと思った。

 思わずその場にうずくまりそうになったけれど、そんな姿を誰かに見られるわけにはいかない。

 私は鉛のように重い足を引き摺って、逃げるようにその場から立ち去った。
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