一途な御曹司に愛されすぎてます
「レポートにはアクティビティに関するご要望がありましたね? 現在、検討させていただいております。大変貴重なご意見をありがとうございました」


 企業の代表者として謝意を表してくる彼に対し、私も「ど、どういたしまして」と口籠りながら頭を下げた。


 ご意見というか、思ったことを普通に書いただけだ。

 せっかく素敵な高原や渓流がすぐそばにあるんだから、四季折々の魅力を存分に満喫できるオプションを楽しみたいって。


 たとえば早朝の靄に包まれた古城の周辺を、馬車とかで散歩できたらロマンチックだな、とか。

 森の緑に囲まれた空間で、川のせせらぎを聞きながら淹れたてのコーヒーを飲んでみたい、とか。

 そういう、大人がゆったり過ごせる時間をもてたら素敵だと思ったから。


「階上の里に続いて古城ホテルにもご宿泊いただき、有意義なご意見もお聞かせいただいて、誠にありがとうございました」


 彼が丁寧に頭を下げて、反射的に私もまた頭を下げる。


「こちらこそ、いろいろとありがとうございました」


 お互いに深々とお辞儀をし合い、同時に背筋を伸ばして顔を見合ったところで、私は異変に気がついた。

 私を見つめる階上さんの顔つきというか、全身から醸し出す雰囲気が、さっきまでとまるで違っている。
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