一途な御曹司に愛されすぎてます
 品行方正な貴族のように格式ばっていた表情が急に艶やかに色づき始めて、変貌を目の当たりにした私の胸がドキリとした。


「さてと。これでキミと俺の間の『客とサービス提供者』としての関係は、完全に終了したわけだ。今までは自分の立場上セーブしていたが、もうなんの遠慮もない」


 口角を上げながら、いきなり砕けた口調で話し始めた彼に私は目を瞬かせた。

 このワイルド感漂うセリフや表情には見覚えがある。

 古城ホテルのレストランで、私が康平と別れた事実を知ったときにも、彼はこんな顔をしていた。


「これから先は対等な立場だ。純粋に俺とキミ個人の交流だな」


 今までの執事のような慇懃な物腰や、丁寧な言葉遣いはどこへやら。

 本革シートに背を預け、長い足を悠々と組み、前髪を両手で乱雑に掻き上げている姿は、仕事を終えて自室でリラックスしているエリートビジネスマンそのものだ。


 これが、階上リゾートグループの専務としての重圧から解放された彼の素顔?

 公的な立場という仮面を脱いだ彼を呆気にとられて眺めていたら、サバンナのハンターみたいに鋭く光る目で流し目されてビクッとした。
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