一途な御曹司に愛されすぎてます
「そんな心配をする必要はない。大丈夫だ」


「いえ。階上さんに恥をかかせたくありませんし、周りのお客さんたちにもご迷惑になりますから」


 毅然と固辞する私に対して、階上さんは余裕の表情。少しも困った様子を見せない。


「恥も迷惑もない。誰もいないんだよ」

「え? いない?」


 意味がわからずオウム返しする私に、彼は唇の端を上げながら答える。


「他の客はいない。レストランは貸し切りだから、他人の目を気にする必要はまったくないんだ」


 彼をポカンと見上げた私の両目が、どんどん大きく見開かれる。

 え? ちょっと待って。貸し切りって言った?

 だって……、これから夏に向かう時期、きっと南欧風リゾートホテルって一年で一番の書き入れ時でしょう?

 この辺の田舎じゃ珍しく人気のあるスポットだし、部屋も満室のはずだ。

 その大勢のお客さんたちが利用するであろうレストランを、この人、勝手に貸し切りにしちゃったの……?
< 179 / 238 >

この作品をシェア

pagetop