一途な御曹司に愛されすぎてます
 ゼリーケーキ。そういえば聞いたことがある。

 たしか南米発祥のデザートで、お菓子作りが趣味の人たちの間で人気だったらしいけれど、そういった趣味もないし器用でもない私はスルーしていた。


 実際に目にしてみると、すごい! これが本物の花じゃないというのが驚きだ。

 芍薬のように幾重にも重なった花びら一枚いちまいが、人の手によるものだなんて信じられない。


「食用生花のエディブルフラワーを使う方法もあるし、まあ、キミの考えの手助けにでもしてくれ。なにはともあれ食べてみよう」

「はい!」


 ドキドキしながらスプーンですくって食べてみると、甘さ控えめで、花模様の部分はミルクやココナツやジュースの味付けがされていて食べやすい。


 実際のメニューに加えるには、消費期限や技術やコストの点でいろいろ問題があるだろう。

 でも『食べる』という一見単調な行為から与えられる新鮮な感動は、日々の生活の潤いになる。

 こういうのを私は求めていたんだ。


 彼の心遣いという優しいエッセンスも加わって、本当に胸がジーンとする味だ。

 階上さん、私の仕事の話を覚えていてくれたんだ。ほんのちょっと話しただけなのに。

 他者を尊重する彼の本質が、こういうところに垣間見える。

 彼の方が私の何倍も忙しいんだろうに、私の企画の助けになるような案をずっと探してくれていたなんて。
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