一途な御曹司に愛されすぎてます
 そうだ。おとぎ話みたいに、ひと目惚れした女の後をノコノコ追いかける王子なんて、現実の世界では誰も許してくれない。

 なのにあなたは何度もこうして私に愛を囁いて、だから私も自分の本音に甘えてしまいそうになる。

 でも、だめ。夢を見そうになるたび、胸に深く刻まれた言葉が頭の芯でエコーするの。


『あなたはうちの嫁に相応しくありません』

『矢島淳美という女性は、我が階上グループには相応しくありません』


 そして私は痛みと共に夢から目が覚める。

 私にガラスの靴は履けない。私たちはこの先へ進んじゃいけない。

 どんなに……進みたいと私が望んだとしても。


「キミは勘違いしている」

 唇を噛み、下を向いて涙をこらえる私の耳に彼の声が聞こえた。


「俺は王子なんかじゃない。キミに恋した、ただの男だ」


 弾かれたように顔を上げると、彼の視線と私の視線がぶつかり合った。

 真剣な瞳に射抜かれ、切れそうに張りつめていた息が少しだけ緩む。
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