一途な御曹司に愛されすぎてます
「キミの言う通り、俺には重い責任がある。だとしても俺自身も、俺の結婚も人生も、階上グループを発展させるための道具じゃないし、誰にもそんなことはさせない」


 そう言って彼は、指輪を嵌めた私の薬指にそっとキスをした。


「キミは俺から離れるために逃げ出したけれど、逃げる者を追いかけるのが男の本能だ。どうしたってキミは俺から離れられない運命なんだよ」


 言葉通り彼は私を捕えるように指先を軽く噛んで、その悩ましい感触に私の心が震えた。

 胸の中で、自制心と彼への執着が激しく渦巻く。

 煩悶に胸を掻き毟られ、追いつめられ、剥き出しにされた私の本能が理性と戦っている。


「階上さん。でも私……」

 でも、でも、でも。

 その次の言葉が続かない。

 彼を拒絶する決定的な言葉を探しても、私の中のどこにも見つからない。

 この期に及んで、引き返すことも前に進むこともできずにいる臆病者の私を、業を煮やした彼が抱きかかえて立ち上がった。
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