一途な御曹司に愛されすぎてます
 歯を食いしばって我慢する私を追い詰めるように、彼の吐息が耳朶と首筋を何度も行き来する。

 その意図的な行為にいちいち背中を反らしながら、無力な私は彼の望みを叶えるしかなかった。


「悠希……さん」

「よくできました。お利口なキミにご褒美だ」


 抵抗する間もなく私の唇は簡単に奪われてしまった。

 唇と唇が重なった瞬間、これまで拘り続けた牙城があっけなく崩れる音が自分の中で鳴り響く。

 キスというラインを超えてしまった事実が、じわじわと私の中に入り込んで抵抗する力を奪っていく。


「とっくにバレてるぞ。キミも本当は俺が好きってことがな」


 小鳥のように戯れ合うキスの合間の優しい声に、泣きたいほど切ない気持ちになった。


 知ってる。私の本当の気持ちなんて、あなたがお見通しだってこと。

 ずっとあなたを拒否しながら、本当はこうなることを望んでいた。

 だからあなたはこうして私を追いかけて、強引に追い詰めてくれたんだ。

 私の気持ちを、あなたは私よりもわかってくれていた……。
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