一途な御曹司に愛されすぎてます
 高揚しながら小鉢を手に取り、塗り箸でイカをつまんで食べてみた。

 肉厚なのに柔らかくて、とてもまろやかな味わい。
 上品な薄味の汁をたっぷり含んだ大根を噛むと、イカの旨味と野菜の甘さが広がって最高だ。

 口の中の味が消えないうちにまた日本酒を口に含むと、もうたまらない。

 小さな竹細工の卓上照明に照らされたお酒と料理が宝物に見える。


 窓の外へ目をやれば、大きな牡丹雪が降っている。

 いつの間にか風が止んだのか、揺らぐことなく上から真っ直ぐ下りるフワフワの塊は、夜の闇に現れた白い妖精みたいだ。


 雪囲いでしっかり守られた松の木と、視界を埋める真っ白な雪が金色に近い綺麗な光でライトアップされて、ため息が出るほど美しい。

 視覚と、味覚と、静寂に満ち足りたこの体験があまりにも素敵すぎて、時間を忘れてしまいそう。
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