一途な御曹司に愛されすぎてます
「今日は淳美を特別な場所に案内するよ」

　馬車から降りてホテルの庭を一緒に歩きながら、彼が言う。

　眩しい夏の光に照らされる花々の競演をうっとり眺めながら、私は聞き返した。


「特別な場所って？」

「前に一緒にここを散歩したとき、キミが木立の先になにがあるのかと質問したろう？」


　ああ、そういえば『まだ時期じゃない』とか言って、あのときは教えてもらえなかったっけ。


「今から行こう。おいで」

　返事も聞かずに悠希さんが私の手を取り、庭の先に進んで木立の中へと踏み入っていく。

　森の中は少し道を進んだだけで、後ろにホテルや庭があるのが信じられないくらい、豊かな自然の世界が広がっていた。


　頭上を見上げれば背の高い木々が適度に日差しを遮り、柔らかい光が降り注ぐ。

　小鳥たちの可憐なさえずりや、足元の土を踏みしめる音が耳に響いて、穏やかな静けさが体中に染み渡るようだ。

　私は大きく深呼吸して、澄んだ空気がもたらす心地良さを味わった。
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