一途な御曹司に愛されすぎてます
『あんなこと』という美千留の言葉が、過去のつらい出来事を私に思い起こさせた。

 胸の奥を爪の先で引っ掻かれたような痛みが走って、なにも言えなくなる。


 今から一年前、私は恋人だった康平と別れた。

 別に浮気されたわけでもないし、私が心変わりをしたわけでもない。

 それどころか交際はとても順調だったんだ。康平から『お前との将来を真剣に考えているから、両親に会ってもらいたい』と言われるくらい。

 あのときの、今にも弾けそうな胸の高鳴りと大きな感動を今でも覚えている。


 本当に本当に幸せだった。なのに……。

 まさかそれが別れの原因になるなんて思いもしなかった――……。

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