一途な御曹司に愛されすぎてます
 上機嫌の美千留が椅子から立ち上がり、カップの乗ったお盆を手に持った。


「さ、心置きなく旅を楽しむためにも仕事を片付けちゃおう!」

「うん」


 一緒に会議室を出て廊下を歩く美千留の足取りが浮き立っている。

 私も心を弾ませながら、宿泊予定のホテルの景観を思い浮かべた。


 送られてきた資料の写真を見ると、広大な高原に建築されたホテルの外観はヨーロッパの豪華な古城そのもの。

 とても綺麗な庭や、牧場や、私有地の森の中には渓流もあるらしい。

 純和風を追求した階上の里とはまた違った意味で、非日常を体験できるリゾート地だ。


 そこで過ごす素晴らしい休暇をうっとり思い描きながら階段に差し掛かったとき、突然、目の前を歩いていた美千留の姿が見えなくなった。

 え? 美千留が消え……
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