一途な御曹司に愛されすぎてます
 私の半歩前に立ち、進行方向を示す男らしくて大きな手に思わず見入ってしまう。

「どうぞ」と再び促され、私は反射的に「あ、はい」と返事をして歩き出した。

 大理石のマーブル模様を踏みしめながら、頭の中は軽い混乱状態。


 なんでこうなったの? そもそも階上リゾートグループの専務様が、どうしてこんなベルスタッフみたいなことをしているの?


 疑問でいっぱいの私の斜め前を進む彼は、ちょうど二歩分くらいの距離を正確にキープしながら先へと進む。

 その後をとにかく黙々とついていって、宮殿のようなホールを抜けながら、あることに気がついた私は密かに首を傾げた。


 なんだか、ひと気のない方へと案内されているようなんだけれど。

 他のお客さんたちはみんなもっと手前のエレベーターか、階段を上っていくのに、なんで私だけ明らかに別方向?


「あの、専務さ……」

「こちらが専用エレベーターです」


 脇の通路をしばらく進んだ先のエレベーター手前で立ち止まった専務さんが、上矢印のボタンを押した。

 専用エレベーター? なんの? 誰の?
< 59 / 238 >

この作品をシェア

pagetop