一途な御曹司に愛されすぎてます
「せ、専務さん?」

「そうか。そういうことなら遠慮はなしだな」

「遠慮? どういう意味ですか?」


 それまでとても穏やかだった専務さんの顔つきが、“狙った獲物は逃がさない”的な精悍な顔つきに変わっている。

 なんというか、サバンナのハンターみたい。やたら鋭利で意欲満々なオーラを感じるんですけれど。


「キミ、頼む」

 訳がわからずポカンとしていると、専務さんが軽く片手を上げて近くにいたウェイターを呼んだ。


「私たちのデザートは彼女の部屋に運んでくれ。それとシャンパンも頼む」

「え?」


 ウェイターが即座に「承知いたしました」と下がっていくのを見て、私はすっかり慌てふためいた。


「あの、お、お部屋にデザートを運ばせるって? そ、それにシャンパンって?」


 動揺している私に、専務さんが実に堂々とした笑みを見せる。


「ウェルカムドリンクがまだでしたね。せっかくですから部屋で一緒にいただきましょう」

「いや、あの、いただきましょうって」
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