一途な御曹司に愛されすぎてます
 専務さんは嬉しそうな表情のままシャンパンを軽く口に含み、記憶を辿るような遠い目をする。


「あの里は、私が初めて陣頭指揮を執った仕事でした。『誰の心にも存在している懐かしい場所で、心をまっさらにして過ごす贅沢な時間』というコンセプトでね」


 彼の言う通り、あの里は切ないほどの郷愁を掻き立てる。

 あの地に立てば誰でも、『帰ってきた』という本能的な喜びや、心からの安堵を得られるだろう。


「専務さんってすごいですね。あの里は海外からの観光客にも大人気ですよね」
 

「おかげさまで皆様に喜んでいただけています。でも実を言うと私の計画は、他の経営陣にはあまり前評判が良くなかったんです」


 意外な話に私は目を丸くした。評判が良くなかったって、なんで?


「なにが問題だったんですか?」


「……ほかの経営陣は皆、あなたの別れた元彼と同じ意見だったんですよ」
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