一途な御曹司に愛されすぎてます
 彼は今度は、私の問いをはぐらかさなかった。

 頬杖を外し、スッと姿勢を正して、真面目な表情で私の目を見ながら口を開く。


「あなたが、ずっと私を支えてくださったからです」


 意外な答えに、私は軽く首を傾げながら目を瞬かせた。

 私が専務さんを支えた? どういう意味?


「階上の里のホールでご自分が言ったことを覚えていますか?」


 彼の言葉をきっかけに、一年前の記憶が朧によみがえってくる。

 ホールに響いていた三味線の音色と共に、あのときの情景が脳裏に浮かんできた。


康平が階上の里への不満を口にして、そのことについて自分の思ったことを言ったけれど、そこまで重要なことを言ったろうか?


「私は今でも矢島様の言葉を覚えています。あなたは『こういう懐かしい世界で、心を綺麗に洗濯するのも、すごく贅沢な休暇の過ごし方』だと言ってくれた」


 専務さんはふわりと目を細め、口元から白い歯を覗かせた。


「驚きました。私の心があなたに乗り移ったのかと思った。あなたの言葉は、あの里へ託した私の願いとまったく同じだったから」
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