【短】残月、残滓、残照、残恋。そして、残愛…。
…。


あー…ムカつく!

あー…ムカつく!


あーあーあーあー!!



私は雨の強くなった窓を見ると、これ以上にないくらいむしゃくしゃした心をそこにぶつけるようにして、着ていた衣装を剥ぎ取った。


「彩雪。ソウのいうことなんて気にすることないわよ?あんなの冗談なんだから」

「…う、ん」


認めたくはないけど…。

本当はそうじゃないと言いたいけれど、私の好きになった男は、まるで紫陽花の花言葉そのものだ。




『移り気』…。



全く、6月の私の楽しみがまた1つ減ってしまうじゃないか!と1人突っ込む。



「はぁ…」

「彩雪。トップモデルともなる人がそんな辛気臭いため息つかないで」


ドでかい溜息に、はなさんが苦笑する。


「だってー…」

「ソウが、そんなに気になる?」

「うーん…」


脱ぎ捨てたぐしゃぐしゃの衣装を、ハンガーに掛け直しながら、答えを探していると、はなさんはくすりと笑って、頭をふわりと撫でてくる。


「いいのよ。無理に答えなくても。彩雪のことなら熟知してるから」

「はなさん…」

「これでも、敏腕マネージャーですから」


二人きりの時は、雰囲気が和やかになり優しいお姉さんのようなはなさんは、そのままぽんぽんと私の頭を撫でて、茶目っ気たっぷりにウィンクをして寄越す。


「それ、自分で言うー?」

「そうよ。言わないと誰も褒めてくれないじゃない。この業界、そんなもんでしょ?」

「まぁ、ね」
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