【短】残月、残滓、残照、残恋。そして、残愛…。
私はお気に入りの巻き髪の先を、少しくるくると弄って苦笑する。
それを見て、はなさんはどこか満足そうににっこり微笑む。
すると、徐にはなさんのスマホがピリリッと鳴った。
その無機質な音がはなさんマネージャーとしての境界線のようで、私は思わずくすりと小さく笑ってしまう。
はなさんは口元に人差し指をそっと当てると、スマホに耳を当てた。
「…お疲れ様です、岡崎です。はい?えぇ…その件につきましては…」
そして、はなさんは私に小さく「お疲れ様」というジェスチャーをしてから、そっと楽屋から出て行った。
「はぁ……」
ため息は尽きない。
それでも、なってしまってものは仕方ないし、一度やると決めたことは、きちんと最後までやり通したい。
そんなことを思いつつ私服に着替えて、バックに出しっぱなしにしていたメイクポーチなんかを詰め込んでいると、少しだけ…ほんの少しだけ控え目なノック音がする。
こんこん
それが誰なのかはすぐに想像がつく。
私が着替えて、帰り支度が出来るタイミングを知っているのは、はなさんともう一人だけだから…。