【短】残月、残滓、残照、残恋。そして、残愛…。
私は、スッとソウの顔を見た後で、盛大なため息と共にこんなことを口走っていた。



…自分でも、無意識の内に。



「モデル、辞めようかな…」



そう言ってしまってから、失言、それも大失言をしてしまったことに気付く。

その証拠に、ソウは完全フリーズしていた。


少しの沈黙が、心に痛い。

そして、数秒後聞こえてきたのは、ほんの少しだけ掠れ気味のソウの声。



「…なんで?いきなり…?」


「や、なんでって…」


「彩雪は、俺に写真撮られるの嫌になった?それとも別の男に…撮らせるつもり…?」



こいつは一体何を言い出すんだろうと、ぎょっとしたけれど、どうやらとんでもない勘違いをしてるようで、元々2人の距離がソウがギシッと動いたことで更に縮む。

狭い車内で逃げ場を失った私は、精一杯の力で近寄って来ようとするソウの顔から視線を逸した。



「彩雪、こっち向いて」


「…っ。い、や」


「お願い」


「やだってば…っ!」


「じゃあ、意地でも向かせる」


「…え?って、ちょ、ちょっと…!!」



ソウは、私の両肩に手を置いて、下を向いた私を覗き込んでくる。

それが凄く嫌で、横に顔を背けようとした所を、顎にそっと手を当てられてから、少しだけ強引にソウの方へと引き寄せられた。

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