【短】残月、残滓、残照、残恋。そして、残愛…。
「分かった!分かったから、離してよ!」


「…ほんとに?逃げない?」


「こ、この状況でどうやって逃げんのよ?」


「ん…よしよし。彩雪はその方がいい…」


「…っ?!」



ぽんぽんと頭を撫でられ、蕩けるような微笑みを投げ掛けられ、カァーっと頬が熱くなった。



こんなのは狡い。

私の蓋をした想いが全て出てきてしまうじゃないか。



観念して、一呼吸置いてから、私は自分の部屋に招き入れようとした。

…けれど、玄関ではたと部屋の中が片付いていないことを思い出して、ソウを玄関の中でステイさせる。



「ちょ、か、片付けるからここで待ってて!勝手に入ってきたら、殴り倒すからね!」


「はいはーい」



さっきまでの余裕の無さは何処へやら。

すっかり元のソウに戻っていて、私はなんとなく安堵した。

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