【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛
窓から中庭を眺めていると、辻先生に「おい」と呼びつけられる。
ガラス張りの廊下を進んだ先には、骨組みがむき出しの黒くオシャレな階段があった。
先生はそこを上がっていく。
「うちにいる間、今の仕事はどうすることにしたんだ?」
振り返らず階段を上りながら、先生は質問を投げかけてくる。
「シフトは、特に変えないつもりです。他の方に迷惑もかかるし……でも、休みとか、それ以外の時間はこちらの仕事の手伝いはしていきます」
今はだいたい、週四日から五日、病院食堂で働いている。
仕事は日によっては夕方早めに帰れることも多いし、休みもそれなりにあるから、ここでのお手伝いをする時間はあると思う。
「二足の草鞋、か……まぁ、せいぜい元々の職場に迷惑をかけないことだな。うちの仕事は楽じゃない」
「そっ、そんなことわかってます! 自分の仕事も、ここでの仕事も、どちらもちゃんとやりますし!」
だったら住み込みで働けとか言わないでよっ!
無理難題突き付けてきたの、そっちでしょー⁉︎
さすがにそうは言えなかったけど、心の中で存分に叫んでやる。
動物にはいい先生だけど、私はやっぱり苦手だ。