【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛


「さっきムロから連絡があって、明日少し遅刻したいらしい」

「そう、ですか」

「だから、明日の朝の散歩は俺が一緒にいく」

「え、先生が?」


アレサから離れ、立ち上がった私を、先生は真顔のままじっと見下ろす。

「なんだよ」と言ったと同時に片手で両頬を押さえられ、ぎゅっと中央に向かって口元を潰された。


「なんか文句あるのか? この口は」

「んな、なっ、ない、でしゅ……」


突然の悪戯に、咄嗟に私に触れる先生の腕を自ら掴んでいた。

足元にいるアレサが、珍しく「ワン」とひと声鳴く。

タコのようになった口が元に戻り、慌てて先生の腕から手を離した。


「いつもの時間より一時間早く出る」

「え、では、朝ごはんは……」

「先に散歩だ」


ドア前から一歩を踏み出すと、声をかけなくてもアレサが先生に付いていく。

先の階段を下りていく背中に向かって「わかりました」と返事をした。

一人になって部屋のドアを閉め、摘まれた頬を両手で包み込む。

募った緊張を吐き出すように、深く深呼吸をした。

ベッドの上に居場所を落ち着けたじゃこが、おかしな行動を取っている私をじっと見つめている。

その視線が全てを見抜いているようでドキリとした。

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