ラヒの預言書

ソルの寝台に腰掛け、初めて話した時を思い出していたガドランは、余計に気が滅入っていた。

何かと周囲の好奇の目に晒されていたソルが、また良からぬ者に狙われる可能性は十分にあった。

それだから、なるべく行動を共にして陰ながら守って来たつもりだったのだ。


「あの日、中までは入れずとも、一緒に大神殿に行けばよかった.......クソッ」


後悔の念が次から次へと湧き出ては、ガドランを苛立たせる。

居た堪れず部屋を出ると、目の前にさっき行ったはずのリロが立って居た。


「ガドラン様、今度の月祭儀の準備を行う神官に神官見習いからは、我らが選ばれました。それに際し、王宮にて協議に参加する様に言われました。キルバル殿下が取仕切る大きな祭儀です。暫くは其方の方に心血を注ぎましょう。皇后様が療養後、初めてお目見えされる重要な場です。心して掛からねば、何やら起こるやも知れませぬゆえ.......」


「そうか.......分かった。でも、ソルの事は諦めないからな」


「.......はい」


ガドランは、堅い決意と共に離れ難いソルの部屋を後にした。

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