ラヒの預言書
11. 偶然の出会い

あの東屋の一件以来、ソルはキルバルと会っていなかった。

アルツァには、月祭儀の支度に忙しいからと、そればかりしか言われず、いまいち納得出来なかったけれど、ソルもソルで実際会ったら気まずいだろうと思うと、それ以上は踏み込めないでいた。


「.......今日はなんだか騒がしい様だけど、何かあるの?」


宮殿仕えの侍女や侍従が、忙しなく廊下を行ったり来たりしている様を見ながらソルが口を開いた。


「はい!今日はお偉い方々が早々に集まり、月祭儀の協議が行われる予定です。最終の打ち合わせの様なものです」


「へぇ~.......」


( アルツァが言ってた事も、あながち嘘じゃないのかな.......)


「ステーシア、私もその祭儀に出席するの?」


「はい!勿論ですとも!!ちゃんとお衣裳も用意しておりますので、ご心配なさらず!」


「.......いや、そんな心配は頭に無かったけど.......」


( 月祭儀までが私の最後の残された時間か.......その祭儀に側室として出てしまえば、きっと後戻りは出来ない.....)


ソルはそんな自問自答を心の中で幾度となく繰り返していた。

コルトーとの約束は堅い誓いとなって、私の中で一番深い所に根づいている。

命を掛ける覚悟もして来たはず、ならばその方法は神官でなくてもいいはずだ。

神官にこだわっていたのは、それしか方法が無いと思い込んでいたから。

成れるか分からない大神官の座を目指すより、偽でもキルバルの側室として仕え、いつか預言書を解読し、その褒美として望みを叶えて貰う方が現実的ではないか?

普通に考えれば一択で決まりの筈なのに、心が邪魔をしていた。



< 78 / 90 >

この作品をシェア

pagetop