ラヒの預言書

ステーシアが、仕える主を完璧に仕上げる事に生き甲斐を感じている節があるのは、最近分かって来た事で、その楽しみを奪ってしまっているソルは申し訳無く思っていた。

こんな時くらい言う通りにしても罰は当たらないだろう。


「あ~それにしても、今日はいい天気.......ずっと部屋に篭もっていたから気持ちがいい」


思い切り腕を伸ばして背伸びをすると、少しだけ気分が晴れた気がした。


「久々に見た気がする.......この空の青」


コルトーに誓ったあの日も空を見上げた。


「迷ってる暇は無いのかも知れない.......」


「ソル様、皇后様の庭の東屋よりは劣りますが、この庭にも東屋がありますゆえ、お茶でもご用意致しましょうか?」


「うん、ステーシアも一緒?」


「お呼ばれ致します!!それでは、すぐ用意して参りますのでこちらでお待ち下さい」


ステーシアがお茶の準備に戻っている間、ソルは庭を散策しに出掛けた。

少し歩くと、王宮に出入りする臣下の者達が目に入った。


「月祭儀は、本当に大きな祭儀だから当たり前か、キルバル様もとても神経を使っているし、皇后様の事があるから尚更かも知れないけど.......」


神殿から連れてこられる途中での、あのやり取りを思い出す。

あの時のキルバルはとても怖かった、叔父を相手に怒りで震える胸の高鳴りを覚えている。


「何も起きなければいい.......」


ソルはその場に膝を着いて目を閉じ、太陽に向かい両手広げた。


「太陽神レルーガよ.......皆が無事に祭儀を終えられる様に守り給え.......」


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