出稼ぎ公女の就活事情。
 聞き違いだと思った。

 動揺していたから、だから聞き違えたのだと。

 なのに。

「……え?」

 と、顔を上げて見たカルダさんの表情で、わかってしまった。
 言いにくいことを告げたという顔。
 そんな、表情をしていたから。

「どうしてですか?」

 わたしが我が儘ばかりだから?
 わたしが仕事らしい仕事もしない、お荷物だから?
 わたしがリルに迷惑ばかりをかけてしまっているから?
 わたしが倒れたりしたから?
 それとも、それとも、それとも?


「三日後の船がご用意出来ました。予定より少し早いですが、そちらでご帰国下さいとのことです」
 
ーーフランシスカに着いた後も従者と馬車を用意しますのでどうぞ自国までお戻りになって下さい。

 カルダさんの告げた要件は、そういうものだった。

 何故?
 どうしてこのことを告げるのがリルじゃないの?

 頭の中を様々な疑問がグルグルと回っていたから、わたしはその後に続けられた言葉のほとんどを聞いていない。

 どうしてですか?という一言が精一杯。
 それに対するカルダさんの答えすら、わたしは覚えていない。

 その後はただそれだけしかできない人形のように頭を上下に小さく振るだけの動作を繰り返した。
 だって、わたしにはそれを拒絶する資格はない。

 数週間先だったのが、三日後になっただけ。
 
 あぁ、また吐き気がする。

 グルグル、グルグル。
 グルグル、グルグル。

 頭の中を数多くの言葉、単語?……よくわからない何かがグルグル駆け巡って、回る。
 ひたすら回り続ける。

ーー気持ち悪い。

 気持ち悪くて、苦しくて、たまらない。



 いつ、カルダさんが部屋を出て行ったのかも知らない。

 気がつけばベッドの中だった。
 いつの間に、自分の与えられた部屋に戻って、いつの間に夜着に着替えたのか。
 おぼろげで、曖昧な記憶の中でミラさんに手を引かれて歩いたような気がする。
 言われるがまま、身体を動かしていた気がする。

 すべてが曖昧で、意味のないもののような気がした。

 わたしがすることに、意味のあるものなどないのだ。

 国を出てみても、出稼ぎなどと言ってみても。
 わたしがしてきたことに、意味などない。

 
 
 
 

 
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