出稼ぎ公女の就活事情。
わたしは痛めた足首を庇いながら壁を支えに立ち上がった。
足はまだ大丈夫そう。
痛いは痛いけど、我慢して歩くことはできる程度。
それよりは縛られた両手ーー特に左手首の方が問題のようだ。
痛めていたところに関節を外したりはめたりをしたからか、さっきから熱を持ってずくずくと脈打っている。
背に回されているせいで目に入らないのは幸いかも知れない。見てしまえば余計に痛くなりそうだった。
男たちは一人は扉のそばに立ち、一人は大股でわたしに近づいてくる。
あの方、とはあの銀狼の人だろうか。
近づいてきた男は無言でわたしの手を縛っている縄の反対側、壁の突起に括りつけた端を解いている。
わたしはすぅ、と肺に空気を吸った。
「待って下さい。おとなしくついていきますから。だから、モンタさんは解放して下さい。用があるのはわたしだけでしょう?」
そう言ったわたしを男は無言のままでジロリとねめつけると、おもむろに嫌らしい笑みを浮かべた。
「まあ、用があるのはお嬢さんだけなんだが……なぁ」
わたしを繋いだ縄を手にしたまま、コツコツとモンタさんの前に立つ。
「けど、ほらコイツ色々知りすぎてるからよぅ?野放しにするわけにはいかないだろ、な!」
「なにを!?」
ニヤニヤと笑う男がモンタさんの頭を片手で掴んで持ち上げる。
そのまま、
「やめてっ!」
「ぁ、がっは……」
わたしが制止の叫びを上げたのと、男の靴先がモンタさんの胸元をえぐったのはほぼ同時だった。
「コイツさあ、バカなんだよ。もう大ばか。平民の猿こうのクセに騎士になるとか言ってんだぜ?ハッ!俺らみたいなゴミ屑が騎士になんざなれるわけがねぇだろ!だからよぉ、優しい俺様は同郷の誼でとっとと諦められるようにしてやったんだ!こうして」
と男の膝が持ち上げられる。
その靴の真下にあるのは痛みにうずくまったモンタさんの右手。
「やめっ!」
「おい」
上げられた足が振り下ろされるより前に、扉側から声がした。
「余計なことして時間を無駄にしてんじゃねぇ。遅いってなってみろ、次に消されるのはコッチになるんだぞ」
「あー、あー、あー、良かったなあ、踏まれずにすんで。コワーイお人を待たしてるからなぁ。ま、けど、トドメなんざ刺すまでもねぇか」
じろじろとモンタさんの手を見下ろす男を、わたしは唇をかみしめて睨みつけた。
今すぐこの縄から手を抜いて殴りつけてやりたい。でなければ跳び蹴りの一つもしてやりたい。
だけど、この男一人、もしくは扉のそばの男と二人、運よく倒したとしても、それで終わりじゃない。
今、この身体の状態で、この場所の情報も他の人間の数も何もわからない状況で短慮を起こしてもただ状況を悪化させるだけだ。
わたしは肌に爪が食い込むほど、キツく、キツく手を握り締めて、何もせず、言わずに男に縄を引かれるまま足を前に運んだ。
足はまだ大丈夫そう。
痛いは痛いけど、我慢して歩くことはできる程度。
それよりは縛られた両手ーー特に左手首の方が問題のようだ。
痛めていたところに関節を外したりはめたりをしたからか、さっきから熱を持ってずくずくと脈打っている。
背に回されているせいで目に入らないのは幸いかも知れない。見てしまえば余計に痛くなりそうだった。
男たちは一人は扉のそばに立ち、一人は大股でわたしに近づいてくる。
あの方、とはあの銀狼の人だろうか。
近づいてきた男は無言でわたしの手を縛っている縄の反対側、壁の突起に括りつけた端を解いている。
わたしはすぅ、と肺に空気を吸った。
「待って下さい。おとなしくついていきますから。だから、モンタさんは解放して下さい。用があるのはわたしだけでしょう?」
そう言ったわたしを男は無言のままでジロリとねめつけると、おもむろに嫌らしい笑みを浮かべた。
「まあ、用があるのはお嬢さんだけなんだが……なぁ」
わたしを繋いだ縄を手にしたまま、コツコツとモンタさんの前に立つ。
「けど、ほらコイツ色々知りすぎてるからよぅ?野放しにするわけにはいかないだろ、な!」
「なにを!?」
ニヤニヤと笑う男がモンタさんの頭を片手で掴んで持ち上げる。
そのまま、
「やめてっ!」
「ぁ、がっは……」
わたしが制止の叫びを上げたのと、男の靴先がモンタさんの胸元をえぐったのはほぼ同時だった。
「コイツさあ、バカなんだよ。もう大ばか。平民の猿こうのクセに騎士になるとか言ってんだぜ?ハッ!俺らみたいなゴミ屑が騎士になんざなれるわけがねぇだろ!だからよぉ、優しい俺様は同郷の誼でとっとと諦められるようにしてやったんだ!こうして」
と男の膝が持ち上げられる。
その靴の真下にあるのは痛みにうずくまったモンタさんの右手。
「やめっ!」
「おい」
上げられた足が振り下ろされるより前に、扉側から声がした。
「余計なことして時間を無駄にしてんじゃねぇ。遅いってなってみろ、次に消されるのはコッチになるんだぞ」
「あー、あー、あー、良かったなあ、踏まれずにすんで。コワーイお人を待たしてるからなぁ。ま、けど、トドメなんざ刺すまでもねぇか」
じろじろとモンタさんの手を見下ろす男を、わたしは唇をかみしめて睨みつけた。
今すぐこの縄から手を抜いて殴りつけてやりたい。でなければ跳び蹴りの一つもしてやりたい。
だけど、この男一人、もしくは扉のそばの男と二人、運よく倒したとしても、それで終わりじゃない。
今、この身体の状態で、この場所の情報も他の人間の数も何もわからない状況で短慮を起こしてもただ状況を悪化させるだけだ。
わたしは肌に爪が食い込むほど、キツく、キツく手を握り締めて、何もせず、言わずに男に縄を引かれるまま足を前に運んだ。