出稼ぎ公女の就活事情。
「フランシスカの王女と婚姻?リルが?」 

 わたしは茫然と呟く。
 あれ?おかしくない?
 おかしいよね?

 リルはわたしにプロポーズしてくれたはず。
 
「婚姻?結婚?王族の血って……」 
「ああ、言ってませんでしたか?私の父はこの国の王なので。ですが私は第三王子なので王位を継ぐことはありませんし、気楽な立場です」

 ああ、そうですか。
 王族なら一夫多妻OKなのかしら。
 血筋を確実に残すために王族はOKって国は多いものね?

 ということはわたしは第二夫人?

「リディ?」
「わたしは第二夫人になるの?」

 リルのことは好き。
 好きだけど。

ーー第二夫人?

 え?どうしよう。
 わたし、ちょっといやかも?
 リルのことが好きだから、好きだからこそリルのそばで別の女性とイチャコラするのを見るのは、耐えられない気がする。

 わたしの疑問を聞いたリルがぷっと吹き出した。

 なんだか子供っぽい仕草にわたしの胸がキュンとする。
 そんな場合ではないのだけど。

「そんなわけはないでしょう」
「そ、そう?」

ーーあれ?だったらわたしの立場は何?

 愛人?愛人なの?
 どうしよう泣きたくなってきた。

「リディ」

 わたしの頭をリルがポンと叩く。

「私はあなたを娶るためにあちこちに根回しをしてきました」
「……うん」
「フランシスカにも、もちろんヴィルトルにも。表向きあなたはフランシスカとルグランディリアとの友好の証として私と政略結婚することになります」
「うん。ーーうん?」

 わたしは目をパチパチさせてリルを見る。
 パチパチさせた拍子に涙がポロリと流れた。

「帰国すればお父上から話があるはずですが、あなたはフランシスカ王の養女という形になります。ですから私と婚姻を結ぶ王女というのはあなたですよ?」
「あ……」

 安心したわたしは一気に気が抜けた。
 全身の力も抜いてパッタリとなったわたしを抱き止めて、リルは唇でわたしの流れ落ちた涙を拭う。

「それからリディのお給金ですが、先にヴィルトルに送っておきましたので」
「え?」
「契約通り、白金貨10枚。きっちり」

 リルがなんだか見覚えのあるイジワルな顔でにっこりと笑う。

「なんで?ダメだよ、そんな!わたし、全然お仕事してないのに!」

 プロポーズされたとはいえ、それはそれ、これはこれ。わたしは全額なんて絶対もらう気はなかったのに。

 わたしの心からの叫びに、リルはますます笑みを深くする。

「ではこれから帰国するまでの間、お世話してくれますか?」
「ーーは?」
  
 なにそれ?どういうこと?とポカンとしたわたしのお腹を、リルがぐいっと引き寄せる。自身もベッドへ身を倒しながら。

「仕事ですから、たくさんお世話して下さいね?ベッドの中でも」
 
 耳元で囁かれて、ボンっ!と顔が沸騰した。

 わたしはクスクス笑うリルの腕の中でジタバタと悶える。

ーーリルは、リルはやっぱりすごくイジワルになったわ!

 
「ちがーうっ!お世話ってこんなんじゃないでしょ!リルのバカっ!!」

 もうもうもう、とわたしは声を張り上げた。

「ちゃんと、ちゃんとした仕事だよ!わたしはちゃんとした仕事がしたいのっ!!」

ーーお仕事させて下さいっ! 

 叫ぶわたしの口をリルは自分の口で塞いでしまう。

 むぐむぐしながらも結局受け入れてしまうわたしは、どうやらリルのお嫁さんとして永久就職することになったようだ。

         
             
 
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