演っとけ! 劇団演劇部
第4幕 アホ洸河と天才御手洗君
 6時限目の終わりを告げるチャイムが鳴る。僕らにとっては始まりの合図だ。
 授業の5分前にノートも教科書もしまっていた僕は、カバンを置きっぱなしにして教室を飛び出した。もちろん遠藤さんも一緒に、だ。廊下を早足で移動し、階段を駆け上がり待ち合わせ場所の屋上に着くと
「よっ、早いね」
とすでに相田先輩は余裕綽々でイチゴ牛乳を飲みながら待ち構えていた。
 どうして2階に教室のある3年生が4階に教室のある僕らより速く屋上に来られるのだろう。昼休みの作戦会議からずっとここにいたのではないのだろうかと疑いたくなってしまう。
「じゃあ、これを見て行動してくれ」
 相田先輩から受け取った紙には、演劇部と時を同じくして廃部にされた部活と、その部員のリストがずらりと表にまとまっていた。
「2時間後、ここにまた集合だ。二人の健闘を祈る。では、散!」
 先輩的には忍者の演技中らしい。らしいというのは屋上から出て行くときにニンニンと言っていた以外、忍者らしい要素がまったく無かったからだ。まぁ、ニンニン言う忍者も一人しか知らないので物まねだったのかもしれない。
「私たちも急ごう」
 相田先輩は3年生だから一人で、僕と遠藤さんは二人で一組の二手に分かれて行動することになっていた。
 今回廃部にされた部活動は、同好会や研究会などを含めて22団体もあった。男子ハンドボール部、薙刀部、社交ダンス部、ボウリング部、ゲートボール部、ドッチボール部、ワンダーフォーゲル部、手芸部、文芸部、アカペラ部、天文部、鉄道同好会、ジャグリング同好会、ラクロス同好会、陶芸同好会、フォークソング同好会、アマチュア無線同好会、百人一首同好会、卓球愛好会、カバディ愛好会、クイズ研究会、落語研究会。
 ちなみに残っている部活だけで、まだ17団体もある。
 新入生歓迎会も風邪で出られなかったから知らなかったけど、さすが『自由な校風』と銘打つだけのことはある。中学はもちろん他の高校でもこれだけの数はないだろう。
 少し減らしたいと考える生徒会の気持ちもわからないでもない。
 僕と遠藤さんはこの『部員リスト』を元にまだ誰も帰らないうちに急いで教室を回らなくてはいけなかった。
 
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