演っとけ! 劇団演劇部
 確かにそれなら簡単に見つけることができる。
「でも計画を話して他の部活に真似されちゃったら、協力してくれませんよ」
 遠藤さんがそう言うと、僕と先輩が口を揃えて、あっと声を出した。
 少し考え込んでから
「…著作権を取ろう」
相田先輩が苦し紛れに変な汗を流しながら言うので、僕は
「次の作戦は何なんですか?」
と聞いた。
「次の作戦?」
「さっき先輩『まず手始めに』って言ってたじゃないですか」
「次の作戦か。次の作戦…」
 先輩は更にまた少し考えたあと
「次の作戦は、ないな」
と、胸を張った。
 この人は一体何をしに来たんだ。
「まぁ、とりあえずやれることからやろうじゃないか。真似をされたらその時はその時だよ。他の部活だって困ってるんだ。困っているときはお互いさま。人類みな異父母兄弟。助け合っていこうじゃないか」
「そうですね」
 優しい遠藤さんが先輩に同意し、僕もそれにあわせた。
 こうして『劇団演劇部立ち上げ大作戦』が決行されることになった。
 生徒会に一泡吹かせることができるかもしれないという期待と、遠藤さんに笑顔が戻ったことで僕は俄然やる気になっていた。
 ある意味、これが僕の生活を一変させる本当のきっかけと言えるかも知れない。いつだって僕らの運命はまわりに委ねられている。だけど行動するかしないかの決断は常に自分で決められるのだ。
 なんにせよ『劇団演劇部』は今ここに誕生したのだった。
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